コンプライアンス違反事例 NO.25 (偽装請負)

【1】違反概要

 大手機械メーカーL社が、自社工場で起きた労働災害を報告しなかったとして、労働基準監督署から労働安全衛生法違反で是正勧告を受けていた。負傷したのは請負会社の男性従業員。本来なら発注元のL社に報告義務はないが、同労基署は、事故当時の労働実態は「偽装請負」で事実上の労働者派遣にあたり、L社にも派遣先としての報告義務があると判断した。事故当時、L社が請負会社の従業員に配置などを指示していたとして、事実上の労働者派遣と認定した。これを受け、同労基署が、同工場長あてに死傷病報告を提出するよう是正勧告した。

【2】発覚の結果会社が被った被害

 2004年の法改正による製造業派遣規制の解禁がきっかけとなり、労働者派遣に対する認識が高まり、更に2006年の公益通報者保護法の制定による通報者の増加およびマスコミ報道により社会的認知度が上がった経緯がある。逆にそれまでは問題が内在化していた可能性が大であり、それ以降L社に限らず請負契約を見直し契約形態の正常化を図って来たと言える。金銭的な被害に関しては報道されておらず不明である。

【3】考えられる原因

 派遣が限定的な業務から製造業派遣など規制が緩和された事で、幅広い業務で対応可能となったが、従来から請負契約で実施されていた業務を、契約はそのまま継続しながら、業務の実態が派遣に近いことが行なわれてきたと考えられる。また、委託と言いつつ、製造業の生産ライン業務の場合で発注元での作業が主の場合は、発注元の生産ラインと連動するなど、相互に業務が連動している場合など、作業指示の一線を画するのが困難なケースも存在する。それらの場合、本来なら派遣契約にすべきを怠り、従来の業務委託契約のまま放置していた可能性が高いと考えられる。

【4】再発防止策

 1)労働関連法規の改正時に的確に契約形態を見直し、違法な契約を放置しないことを徹底する。労働災害の責任分担を勘案し、業務実態に合わせて労働者に対する責任・義務を遂行する上で適切な派遣契約および委託契約を決めるよう社内の発注責任部門に徹底する。
 2)契約締結に際し、社内レビュー部門を一本化し、運用実態に合わせた契約を行なうよう管理・監督する。

【5】再発防止策を機能させる歯止め案

 1)契約の締結責任部門の責任者および担当者に、適宜適切な労働関連法規の研修を実施し、間違いを防止する。