コンプライアンス違反事例 NO.24 (退職した社員からの情報漏れ)

【1】違反概要

 製造業大手のQ社が韓国R社がQ社の技術を不正取得したとして、同社と自社の退職者に1千億円の損害賠償を求めた。かかわった退職者に断固たる措置をとることで、今後の技術流出防止の効果も狙ったものと報道されている。

【2】発覚の結果会社が被った被害

 具体的な被害に関しては報道されていないが、韓国で起きた別の裁判の過程で偶然、Q社の退職者から秘密が持ち出されたことを示す資料が出てきたために、Q社が訴えたものである。

【3】考えられる原因

 1)高度な技術情報や営業情報を保持した退職者に対し、秘密保持や競合他社への転職を規制する契約を、どの程度の厳しさをもった内容にしていたが重要であろうが、残念ながら報道された情報では不明である。
 2)数年前から日本の高度な技術をもった技術者が、中国や韓国に再就職する事例が報道されている。中国や韓国の企業からすれば、高度な技術を保持した人材が早期に確保できることから、積極的に転職・再就職を働きかけているとも考えられる。こういった場合、退職者本人がどの程度までの情報なら紛争にまで発展しないかなどの認識が不足している可能性はあると考えられる。

【4】再発防止策

 1)退職者からの情報流出を防ぐため、在職中に社員と秘密保持契約をより具体的に結んでおく。「勤務中に知り得た情報」などという曖昧な内容ではなく、秘密情報の特定、秘密の期間、違反した場合の損害賠償などを定める。
 2)競合他社への一定期間の転職の禁止契約を結んでおく。  3)機密にかかわる職責・組織の人材に対しては、ヘッドハンティングなどにより競合他社に転職する場合などを想定し、起こりうる情報漏えい訴訟などの事例を在職中から示し、会社の存亡にかかわるような重大な事件を引き起こす可能性があることを知らしめる。
 4)逆に、他社から転職してきた人に対し、入社時に前職で漏洩を禁止した情報や転職禁止の契約違反ではないことを誓約してもらうような中途入社者への対応が必要である。

【5】再発防止策を機能させる歯止め

 1)貴重な人材の処遇に関しては、長期に継続して会社に勤務してもらえるよう配慮を行い、中途退職を防ぎ、定年後も継続して勤務してもらえるようにする。