
コンプライアンス違反事例 NO.23 (業務上横領)
【1】違反概要
決算で忙しい最中の土木会社M社の経理部長が会社の預金をチェックすると、預金が極端に少ないことに気づいた。経理部長が経理担当の女性に尋ねると、この女性は「私が使いました」と言って、横領を認めた。【2】発覚の結果会社が被った被害
経理部長と弁護士が何度も女性宅へ出向き、使い込んだ際の小切手の一覧表、使い込んだ状況、金の使途を自筆で書かせたところ、横領金額は、最終的には 1,840 万円になった。当該女性とその夫は、「弁償する」と言いながら、実際に弁済したのは 37 万円だけと誠意がないことから、M社は、業務上横領罪で告訴することになった。【3】原因
1)本人の身元を調査すると、履歴書に書かれた本人の名、年令も嘘であった。この女性は、文書偽造で執行猶予付きの判決を受けて以来、詐欺、業務上横領で、それぞれ実刑判決を受け、服役していたことが判明した。採用に際して身元調査を実施していなかったことが災いした。2)職安を通して採用したこの女性に、すぐ経理を担当させ、金銭を扱わせたこと。金銭を扱わせる場合は、2 年、3 年位勤務状況を見てから決めるべきであった。
3)この女性の上司が、この女性の仕事ぶりをよく監督していなかったことも原因である。
【4】再発防止策
1)採用にあたり、身元の調査はきちんと実施する。2)お金を扱う仕事を担当させるのは、採用後2~3年経過し、本人の仕事ぶりを観察できてからとする。
3)お金を扱う仕事を担当する社員の上司は、間違いが起こらないよう、適宜現預金の残高などを確認する。
4)社員の生活が突然派手になったり、ギャンブルなどの話がたびたび出てくるようになった時点で、私生活に問題があるのではないかと密かに友人関係などから確認する。
【5】再発防止策を機能させる歯止め
1)業務上横領は必ず発覚することを、機会ある毎に社員に知らしめる。2)相互に監視の目を光らせることが、結局社員のためになることを理解してもらう。